研究概要 |
I-III-VI_2族三元カルコパイライト形半導体の中でもCuInSe_2(CIS)は,約1.0eVの禁制帯幅をもった直接遷移型半導体であり,他の半導体と比べて吸収係数が大きいという特徴があるため薄膜太陽電池用材料として注目されている.最近CuInSe_2をベースとした太陽電池の変換効率が17%を越える高効率のものが開発されており,今後の展開が期待されている.CuInSe_2の成膜法として現在三元蒸着法,スパッタ法,MBE,印刷法スプレー法など国内外で数多く試みられており,それぞれ特徴ある成果をあげている. 本研究では水溶液電着法に着目した.この理由として,成膜装置が簡単,安全,室温で作成可能,電解液中の構成元素の利用効率が高い,大面積化が可能,低コストが可能などが考えられる.この点を考慮し良質な薄膜を得るため,我々が従来より手掛けてきた定電圧電着法を改良したパルス電着法を用いて研究を行った.この利点は添加剤なしで平滑なメッキ面が得られること,ピンホールが減少することなどが挙げられる.改良点はカソードに印加する電位をパルス状に変化させる点である.実験に用いた電解液には,CuCl_2(2.0mM),InCl_3(2.5ml),SeO_2(5.0ml)を含む200mlの水溶液を用いた.パルス波形を示す値としてデューティサイクルθを導入した.カソード基板にはネサガラスを用い,その上に電着膜を作製した.その後,As-deposited膜を窒素雰囲気中で400℃,30分間アニールを行った.その結果パルス電着法を用いてカルコパイライト構造をもつ単相のCuInSe_2薄膜を作製できることが明らかになった.また,カソード方形パルス電位E_B,波形のθや周期T,電解液のpHと膜組成,構造,表面モルフォロジーとの依存性を明らかにした.最も結晶性が良く,膜表面が最も平滑な薄膜が得られる条件は,カソードに印加する方形パルス電位波形(θ=33%,T=3ms,E_B=-0.8V vs SCE),電解液(pH=1.65,温度:40℃),アニール条件(400℃,30分)であることが判った.
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