青・紫外領域で発振する半導体レーザの作成に向け、GaN系混晶のECR-MBE法による結晶成長の基本検討を進めている。すでにMOCVD成長によるInGaN/GaN多重量子井戸レーザの406nmでの35時間の室温連続発振が報告されているが、長寿命化に向け検討すべき課題は多い。その中で特に重要と考えられる点として、(1)整合性のよい基板結晶の選択 (2)高品質立方晶GaNの成長とへき開面による反射ミラーの実現 (3)P形ド-ピングの高濃度化と低抵抗コンタクトの実現等、がある。(1)に関しNGO基板は、格子定数の不整合を0.5%まで小さくできるが、基板の熱的安定性、熱膨張係数差に問題がある。N_2を直接原料ガスとして用い低温成長できればこれらの問題の解決が期待できる。さらに水素化による不純物不活性化の問題もなく、(4)に関する問題解決の糸口もつかめる。以上の観点に立ってN_2ガスを用いたECR-MBE法で(1)励起エネルギーの効率的利用と低温成長の実現 (2)イオン照射ダメ-ジの低減化(3)立方晶GaN実現の可能性(4)サファイア、GaAs、NGO等の基板の比較検討等を本年度の目的として研究を進めた。(1)に関し、分子の中性励起種発光、分子イオン発光さらに原子状窒素による発光などのそれぞれの励起種発光ピークを同定するとともに、それらが、プラズマ励起条件により制御可能なことを実験的に明らかにした。 さらに低温成長と高品質化に有効と指摘されている原子状の窒素励起種の生成に準安定状態での寿命が長いHeガスの混入が効果的なことを明らかにした。また(2)に関連して、基板バイアスによりバンド端近傍からの室温PL発光が可能となるとともに X線回折半値幅も5分程度の品質のGaNがサファイア基板上に成長可能となった。(4)に関連してGaAs(100)微傾斜基板を用いることにより、630℃という低温成長を実現し立方晶の成長が可能となった。 NGO基板上の結晶は現状では、サファイア基板に劣るが、今後その高品質化と混晶成長の検討へと研究を進めて行く。
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