青・紫外領域で発振する半導体レーザの作成に向け、GaN系混晶のECR-MBE法による結晶成長の基本検討を進めて来た。すでにMOCVD成長によるInGaN/GaN多重量子井戸レーザの1万時間室温連続発振が報告され、実用化も近いと考えられているが、なお、長寿命化や特性の向上、プロセスの経済化に向け検討する課題も多い。本研究においては、ECR-MBE法が、高濃度、低エネルギーのイオンやラジカルなどの活性種を超真空中で有効に利用できるため (1)水素ガスを用いることなく、(2)低温で成長可能であり、(3)プラズマ発行分析などその場観察を行いながら、(4)原子レベルで速度を制御した成長が出来るという本成長法に特有の特徴を有効に活かし(1)励起エネルギーの効率的利用と低温成長の実現(2)立方晶 GaN実現の可能性(3)新しい基板材料の探索(4)イオン照射ダメ-ジの低減化(5)原子レベルの成長機構の検討等の基礎的研究を進めて来た。 (1)に関し、窒素分子の中性励起種発光、分子イオン発光さらに原子状窒素による発光などのそれぞれの励起種発光ピークを同定するとともに、原子状窒素が低温成長に極めて有効な働きをしていることを明確にするとともに、ヘリウムガス混入、水素ガス混入による、成長速度の促進効果を示した。(2)に関し、成長中のVIII比、あるいは基板バイアス条件を変えることにより、立方晶と六方晶の構造制御が可能で、何れも成長表面で実効的にIII族リッチにすることにより、立方晶となる傾向があることを明らかにした。(3)に関し、格子定数が極めて近いが、高温で不安定、水素ガスと反応するなど MOCVD成長への適用が困難なLiGaO_2の適用が本成長法では可能で、良好な成長層が得られることを明らかにした。(4)(5)に関し、基板へのイオン照射は、成長速度を減少させるとともに、発光効果を下げることを明らかにし、入射イオンによる成長原子の脱離過程と欠陥の導入を指摘するとともに、基板バイアスによるイオン照射エネルギー抑制の効果を明確にした。
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