複素ニューラルネットワークの理論は徐々に体系化されつつあるが、周波数空間における情報地形図の一般的な性質についてはまだ未解明の部分が存在する。平成7年度は、この点について理論的な研究を進めるとともに、それに特有の性質、特に周波数空間上の般化能力に関して、電子回路によるプロトタイプを用いた実証的な研究を進めている。 周波数領域における学習に関する理論を主とした研究では、学習の初期条件(ニューロン結合の時間遅延の初期状態)がある一定の範囲内に在ることが、理想的な般化を実現するための重要な条件であることが導かれた。これは、周波数を扱う複素ニューラルネットワークの動作安定性を保証するための、大きな理論的な成果と言える。 また、実証的な研究として、電子回路によって周波数信号を直接に処理することが可能なニューラルネットワークのプロトタイプを作製し、実験を進めている。この過程で、並列的な学習の実装に関してやや特殊な工夫を要することが明らかとなり実験の進行が若干遅れているが、複素ニューラルネットワークの周波数領域における般化能力の実証に向けて着実に計画が進んでいる。 これらの成果をもとに、次年度も引き続き理論的、実証的研究をすすめることにより、研究題目である「量子ニューラルデバイス」を実現するための基礎的理論が整うものと考えられる。
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