本年度は研究の最も基本となるECR-CVD装置によるSi薄膜の作製に関して研究を行った。基板温度、マイクロ波電力、ガス流量を変え、Siおよびガラス基板上にSi薄膜を堆積し、堆積速度、吸光度、結晶性等の測定・評価を行った。同時にプラズマ発光スペクトルを観察した。その結果以下のことが明らかとなった。 1)プラズマ発光強度がプラズマ発生直後から徐々に減少する現象が見られた。この発光強度の減少は、装置内壁の温度との間に負の相関があることが見いだされた。 2)プラズマ発光強度とSi薄膜の堆積速度との間には比例関係がある。従って、上記発光強度の減少が堆積速度の減少を引き起こしていることが示された。 3)ガラス基板上の場合、堆積膜は、初めの30〜40nmの間非晶質構造であるが、その後(220)に配向した多結晶構造となる。 4)Si(100)基板上では、室温であってもエピタキシャル成長が可能である。ただし、膜厚の増加とともに結晶性が劣化する。基板温度を450℃程度に高めると、基板と変わらない結晶性のSi薄膜が形成可能である。 5)SiH_4ガス分解用に用いた水素プラズマが、膜堆積と同時に、エッチングも引き起こしており、適度のエッチング作用が低温エピタキシャル成長を可能にしていることを突き止めた。
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