研究概要 |
1.通常型電子顕微鏡(CTEM)像のディジタル化:前年度に構築した画像修復システムを用いて、写真記録した実際のCTEM像をディジタル化し,コンピュータに取り込んだ.写真フィルムおよび取り込みに用いるスキャナの出力が検出電子数に線型でないため,検出電子数とスキャナの出力の関係を測定し,ディジタル化した像の階調の補正を行うことにより処理の精度を高めた. 2.CTEM像の修復:前年度にCTEM像用に拡張し,モデルを用いたシミュレーションにより効果を調べた,ノイズのランダム空間分布条件を取り入れた新しい最大エントロピー法(MEM)を用いて,実際のCTEM像の処理を行った.試料としてフェリチン粒子を用い,大きく焦点ずらししたノイズの多い像を処理した.その結果,MEM処理を行うことにより焦点ずれによるぼけの修復ができ,さらに像のSN比も向上することが分った.同じ視野を正焦点で撮影したノイズの少ない像と比較した結果,フェリチン粒子の有無や位置が正しく修復されていることが分った. 3.走査透過電子顕微鏡(STEM)像の修復:前年度に行った,SN比の低い明視野STEM像の修復によるショットノイズの低減に引き続いて,比較的SN比の高い暗視野STEM像にMEMを適用し,電子プローブの広がりによるぼけに対するMEMの効果を調べた.試料としては,従来MEMが有効に適用できなかった広がった物体であるフェリチン粒子を用い,直径6.2nmの比較的大きな電子プローブを用いて像を記録した.この大きなプローブ径のために,本来直径7nmであるフェリチン粒子が像では12nmの直径に観察された.この像に新しいMEMを適用することにより粒子径は9.8nmに減少し,処理前には分離されていなかった粒子が明確に分離できた.以上の結果から,MEMを用いた修復により解像度を向上できることが実証できた.
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