次世代の超高密度磁気記録用媒体には、磁性領域と非磁性領域がナノメーターオーダーで分離した磁気的微細構造を持つことが必要である。本研究は、従来の平行平板型のスパッタ成膜法に代えて、電子サイクロトロン共鳴(ECR)マイクロ波プラズマを用いたスパッタ法(以下、ECRスパッタ法という)を用いて、前述した磁気的微細構造をもつCo-Cr垂直磁気異方性媒体の作製法を確立することを目指した。 ECRスパッタ法においてプラズマ中のArイオンは、プラズマの電位と基板の電位との差(イオン加速電圧)によって加速され、成膜中に基板を衝撃する。Arガス圧を高め(8×10^<-2>Pa)とし、ターゲットと基板との間の距離を長め(230mm)とすることで、このイオン加速電圧20V以下にすることができる。この条件で成膜すると、50nmという薄い膜厚の場合でも、優れた結晶配向性(X線回折でのロッキングカーブの半値幅5゚以下)と、4KOeを超える大きな垂直磁気異方性磁界、1400Oe以上のや高い垂直方向保持力を持つCo-Cr膜を実現できた。 プラズマ生成室から成膜室にかけて通常は自然に発散している磁場を、補助コイルを用いてカスプ磁界分布とすることで、イオン加速電圧をさらに低領域に拡張することができた。イオン加速電圧を11Vまで低減した条件で作製したCo-Cr媒体では、直径数十nmの結晶粒内に寸法が数nmに揃った明確な磁気的微細構造が発現することを見出した。記録特性を評価したところ、この磁気的微細構造を持つ媒体は低い媒体ノイズと高い記録分解能を示し、総合的にみて、現在内外の研究機関で研究開発中のCo-Cr媒体の中でもトップクラスの超高密度記録性能をもっていることが明らかになった。このように記録媒体の結晶粒内の磁気的微細構造を高度に制御することは、ECRスパッタ法を本研究で導入したことによって初めて可能になった。
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