1:本補助金による研究は、研究者らが数年来行ってきたグレーティング結合器の特性向上を図るための一連の研究のうち、新しい素子構造に対して解析を試みたものと位置付けられる。すなわち、グレーティングは導体ストリップの周期的な配列で構成されるものとし、それを誘電体スラブ導波路に埋めた構造を取り扱った。埋め込みの深さを調整することにより、注入した光パワーを任意次数の導波モードと強く結合させることができる。 2:具体的な実施内容は次のとおりである。 (1)精密な波動論の立場から、問題をウィーナ・ホッフ方程式または特異積分方程式に帰着させた。 (2)導体の幅や配列周期、埋め込みの深さ、導波路の材料や厚みなどの構造パラメータの変化に対応できるソフトウェアを作成し、結合効率特性のデータを蓄積した。 3:今年度の結果をまとめると次のようになる。 (1)本構造により達成された結合効率の最大値は、導体を導波路の中央または表面に付けた従来の解析結果と同様に、約40%であった。 (2)多モードが伝搬可能な厚いスラブ導波路においては、埋め込みの深さを適切に選ぶことによって、任意に指定したモードとの結合を強くできることが判明した。 4:今後はより現実的な設定として、ある幅で絞った光ビームを注入した場合、導体が光領域で損失をもつ誘電体として働くことを考慮に入れた場合の解析に発展させる予定である。
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