本研究は2年間の予定で計画されており、本年度は代数幾何符号の構造とその高速復号法に対する理論的な検討を中心に行なった。そして、計算機シミュレーションを援用して符号化利得の計算、復号手順の複雑さの見積りを実行した。 まず、2次元平面上の代数曲線に構成された符号(代数幾何符号)を従来の1次元直線上のReed-Solomon符号、BCH符号の拡張として理解することにより、ランダム誤り訂正能力に比してByte訂正能力に優れている符号を見い出した。 更に、誤り位置・訂正符号対の概念が、従来の古典的な巡回符号だけでなく、Hermite曲線上の代数幾何符号等に対しても適用できることを明らかにした。これを発展させることにより、代数幾何符号に対する一般最小距離復号法の高速化を実現した。 そして、復号手順を詳細に検討することにより、その手順が並列処理化できることがわかった。これらの成果は、実際に復号器を構成する上で重要な意味を持つ。 また、軟判定を適用して一般化最小距離復号法を行なうのに必要な信頼性情報の設定方法にも、大きな成果を得た。具体的には情報理論的な観点に立った設定法(相互情報量最大化原理と名付けた)を提案し、その優秀性を計算機シミュレーションによって確認した。 以上の成果に基づいて、具体的な復号器の設計・構成を行なう予定である。一部の試作回路はFPGAで構成し、その動作を確認した。
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