研究概要 |
本研究では将来の(第3世代)公衆陸上移動通信システムにおける画像通信を対象とし,ウェーブレットによる画像の多重解像度表現を用いて,高品位階層化伝送を実現することを目的としている.ウェーブレット変換を用いた画像の情報源符号化の研究は近年盛んであるが,通信路符号化などの伝送技術を含んだ研究は少なく,本研究の特色のひとつである,平成8年度では (1)帯域間相関を利用した多重解像度多段ベクトル量子化を提案し,移動体通信を想定した低レート圧縮符号化技術としてJPEGを上回る符号化性能を実証した. (2)また,ウェーブレット変換と不感帯つき多段零連長量子化と算術符号化による階層符号化方式を考案した.解像度と画質を伝送速度に合わせて制御することが可能となり,階層化伝送方式の基幹技術と位置づけられる. (3)ベクトル量子化をパターン検索に使用するという斬新な考えに基づく画像輪郭強調技術を考案し,受信環境の劣化に対する画像修復技術として有望である.比較的軽微な,しかし画像全体にわたる輪郭の修復に有効である. (4)並列組み合わせスペクトル拡散方式のひとつとして,受信側で搬送波の位相再生を無用とする差動並列組み合わせ方式を提案し,その性能評価を行った. (5)とくに,画像の空間スケーラビリティとSNRスケーラビリティを提供することにより階層化伝送へのアプローチを具体化した.同時に,バケット通信を想定してシミュレーションを行い,セル廃棄率6%におけるSNRの劣化を10dB以下に抑え得ることを確認した.
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