研究概要 |
本研究は,人間的で自然な音色を持つ音声の特徴を解明するため,複雑な形態の声道音響管の音響特性を詳細に検討している.平成7年度の研究成果は次の6つに要約される. 1.磁気共鳴映像法(MRI)を用いて声道と鼻腔の立体像を計測し,FEMによる3次元音響管モデルを構築し,その音響特性を検討した. 2.従来の音声器官モデルでは,声道は真っすぐな管で,管壁は剛体と仮定し,断面形状は無視していた.実際の声道は咽喉部でほぼ直角に曲がっており,柔体壁で,断面は複雑な形状をしている.それらが声の音色にどのような影響を与えるかを,音響管内の3次元波動を有限要素法(FEM)を用いて解析する事により評価した. 3.鼻腔と口腔は軟口蓋部で分岐接続している.軟口蓋の開口面積の大小による音色の変化を検討した. 4.唇から出た音の一部は鼻孔に入るので,軟口蓋が閉じた純母音でも鼻腔は音色に影響する.本研究では唇と鼻孔との音響的結合を考慮に入れたシミュレーションを行い,マスクをかけたときのように口と鼻との音響的結合の強い場合の音声への影響を明らかにした. 5.鼻腔は途中から左右の鼻道に分かれて鼻孔に達する.左右の鼻道の対称・非対称性の影響を解明した. 鼻づまりなどの症状の音声の音響特性を明らかにした. これらは,一部を除き国内外の学会・研究会で発表し,その独自性と有効性が国際的に認められつつある. 平成7年度は,本補助金によりワークステーションHP9000/715を設置した.また別途学内予算により,3次元音響の有限要素法と境界要素法のソルバとプリポスト処理のプログラムとワークステーションHP9000/735を設置し,本研究のために使用している.
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