阪神淡路大震災において、被災者救援活動における情報通信システムの重要性が明かになった。本研究では、インターネットに代表される複数経路を持つネットワーク間相互接続システムを対象とし、災害時に発生する緊急情報の円滑な伝達に対応できる柔軟な網の実現を図ることを目的とする。 まず、災害時には、様々な種類の情報伝達要求が急激に発生することに注目し、これらの情報に対して適切な伝送を可能とするための経路制御方式の開発を行った。既存の網への簡単な適応を重視し、IPに対する経路制御を考えた。提案する方式は、IP上での代表的経路制御方式であるOSPFに基づいたものとなっており、次のような特徴を持つ。 (1) 局地的に集中する伝送要求に対処できるよう、複数の経路に対してトラヒックを動的に割り当てることにより、付加分散を行い、輻輳を軽減させる。 (2) 緊急情報の円滑な伝送を保証するために、トラフィックの優先度を考慮した経路割り当てを行う。 更に、災害支援のための情報通信システムを設計するための参照モデルとして、情報通信システムの階層構造モデルを提案した。提案モデルは、情報通信システムを機器だけでなく人やサービスを含むものとして捉え、人間の役割に注目してシステムの機能を階層化している。 本研究で提案した経路制御方式ならびにシステムの参照モデルは、災害対応システムだけでなく、通常のネットワークシステムへも十分に適応できるものとなっている。
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