本研究は、ハードディスク、ディジタルVTR等のディジタル磁気記録システムの高密度化を、垂直磁気記録にPRML方式と呼ばれる信号処理方式を適用することにより達成することを目的として、複合膜主磁極型単磁極ヘッドによる垂直磁気記録に適合したPR方式を組織的に検討した。また、このようにして見出されたPR方式に対するML方式の一種であるビタビ復号法として、復号器入力雑音の相関も考慮に入れた誤り率特性を求め、従来方式と比較検討した。 まず、非磁性膜の膜厚が主磁極自身の厚みの(p-1)倍であるとしたときの孤立再生波形を、pTb(Tb:ビット間隔)だけ離れた2つのローレンツ形波形で近似した。このとき、従来のPR方式の伝達特性を一般化した(1+D^p)(1-D^q)(1+D^l)^mであるようなPRML方式のSN比を求め、良好な特性を示すPRML方式をいくつか見出した。その結果、p=4、q=3、l=1、m=2であるようなPRML方式が最良のSN比を示し、規格化線密度Kが3のときで、従来のp=3、q=2、l=m=0のPRML方式に比べて約5dBのSN比改善が得られることが明らかとなった。 次いで、ビタビ復号器の簡単化を考慮して、良好なSN比特性を示すPRML方式の内では、最も状態数の少ないp=3、q=3、l=1、m=1であるPRML方式を選び、ビタビ復号器の簡単化について検討した。その結果、復号器の状態数を128状態から僅か3状態に大幅に削減することができ、しかも6つのビタビ復号器を並列処理することにより、クロックレートをビットレートの1/6にすることができることが明らかとなった。また、このようなPRML方式について、シミュレーションにより復号器の入力雑音の相関も考慮に入れた誤り率特性を求め、誤り率10^<-4>を達成するのに要する読み出し点の所要SN比を求め、従来のPRML方式の場合と比較検討した。その結果、K≧3の高密度記録において、本方式は従来のPRML方式に比べ良好な特性を示すこと、更にK>2.5の高密度記録においては、通常の単磁極ヘッドによるPRML方式よりも良好な特性を示すことが明らかとなった。
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