多層構造配列素子間隔による素子間相互結合量やインピーダンスの特性などの変化を実験的に調べた結果、配列素子間隔を0.8〜0.9波長に選ぶことで良好な特性が得られることを確かめた。円偏波を放射する多重構造平面16素子配列アンテナについて検討し、多層化による、高利得広帯域の効果と、高利得アンテナへの応用例として衛星放送受信アンテナ(12GHz帯)への可能性を確認した。 多重構造平面配列アンテナの配列素子間隔に対する利得と効率の特性について16(4×4)素子配列アンテナの場合で実験的に調べた。配列間隔を0.8〜1.0波長に選ぶことにより、多層構造による利得向上の効果が顕著になり、同一開口面積で多層構造平面アンテナの利得は、通常の平面アンテナより約3dB高くなった。しかし、配列間隔を0.8波長以下に選ぶと、逆に利得が低下する。開口効率は、通常の平面アンテナでは素子間隔を広げるに従い低下するが、本研究の多層構造平面アンテナでは、素子間隔による変化がきわめて少なく、90%以上の安定した高い効率が得られた。 また、多層構造平面アンテナの理論解析のためにFDTD法(数値解析法)の適用を考察した。単素子の多層構造平面アンテナで解析を行い、その有用性を確認した。さらに、インピーダンス特性、指向性などの検討を進めている。 平成7年度の研究により多重構造平面配列アンテナの特性を実験的に解析し、配列素子間隔の検討、4素子及び16素子配列アンテナの利得、円偏波アンテナ、衛星放送受信アンテナへの応用に関して良好な結果が得られた。多重構造平面配列アンテナの開口効率は、従来の考えでは受け入れ難いような高効率な結果であり、従来の開口面積の定義に代わって、高さを考慮した効率の新定義の検討を進めている。
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