無給電素子を装荷し多重構造にすることによって利得、効率ともに増加する。本研究では、広帯域かつ高利得のマイクロストリップアレイアンテナを実現するため、配列素子に無給電素子を装荷した多重構造マイクロストリップアンテナを用いる方法を提案し、相互結合量やサイドローブレベルなどを調べ、アレイアンテナを設計し、実験的に考察した。配列間隔d=0.8λ以上で、利得が向上するように無給電素子の効果が現れるが、配列間隔d=0.8λ以下では、無給電素子による利得の向上は得られない。これは、配列間隔d=0.8λ以下では、無給電素子の装荷により素子間相互結合量が増大し、特性が低下したものと考えられる。しかし、無給電素子を装荷した多重構造マイクロストリップアンテナは、広い周波数帯域で利得が安定し、配列間隔による変化も少なく、90%以上の高効率を得ることができる。また、多重構造円偏波マイクロストリップアレイアンテナを構成し、その特性を実験的に調べ、高利得でインピーダンス、軸比共に広帯域な特性が得られた。また、この構成では従来の開口面積で効率を定義する方法では、開口効率が100%を越える構成の範囲があり、極めて注目される現象である。この高効率のしくみの本質的な解明は、開口効率の定義の見直しと共に高効率化の構成法に関して今後の重要な研究課題と思われる。さらに数値計算にFDTD法を用い無給電素子を装荷した多重構造マイクロストリップアンテナの解析を行い、計算値と実験値の比較を行った。その結果、入力インピーダンス、放射指向性、給電素子上の電界磁界分布の計算結果において、共振周波数、エッジコンディション、漏れ放射などに代表される物理的な条件も満たしており、さらに実験値とも良く一致していた。無給電素子を装荷した多重構造のマイクロストリップアンテナの解析においてFDTD法は有効であることを確かめ、数値解析によっても無給電素子の効果を確認した。
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