研究概要 |
移動する境界からの散乱電磁界に関する解析はこれまで主として厳密解法が用いられてきた。近年,FD-TD法を用いた研究も発表されているが,移動する境界を格子点で表す際に困難がある。研究代表者黒田らは移動境界適合座標系を用いた数値解析法を提案し,電磁界問題の解析を行ってきている。本研究は科研費交付期間中に任意形状の移動物体からの反射波や回転する物体からの反射波の特性について詳しいデータを得ることを目的とする。移動境界適合座標系を用いて移動する物体からの反射波を求める数値解析を行うには,まずこの手法を厳密解と一致させなければならない。平成7年度は,厳密解との比較に重点を置き研究を進め,2枚の平板間のパルス波について数値計算を行い,J.Cooperによる厳密解(IEEE Trans.AP,vo1.41,no.10,pp1365-1370,0ct.,1993)とのよい一致を得た。この結果は,電子情報通信学会誌に掲載(1995年12月)された。さらに,回転する編心円内の電界についての数値解析を行い,回転運動が円板内の電界に影響を及ぼすことを示すことができた。この結果は,今春の電子情報通信学会総合大会にて発表の予定である。この解法はサグナック効果等の解析にも応用できる。また,ここで求めた回転を表す座標変換関数は回転物体からの反射波の解析にも応用できる。平成7年度の研究実績としては,平行におかれた2枚の振動する導体反射板間の電磁波についての数値解析結果が厳密解法によるJ.Cooperの論文と一致したこと,また,回転を表す座標変換を行い回転運動の数値解析結果を示すことができたことであり所期の目的は達成できたものと考える。
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