研究概要 |
電磁界問題において,移動する物体や回転する物体からの散乱波,反射波の解析は重要な問題であり,これまで様々な解析が行われてきているが,主として厳密解法が取られてきたため任意形状や任意運動に対しては限界があった。しかし,今後より必要とされてくるのは一般性を持つ問題であり,数値解析法を主体とした解法が盛んになってくると考えられる。申請者らが初めて電磁界問題に導入した移動境界適合座標系を用いると,3次元問題も可能になり複雑な形状の物体や運動についても詳しい数値解析ができる。この方法は,格子形成法に時間因子を導入した座標変換法で,複雑な物理座標系を数値計算のための計算座標系に変換した後,FD-TD法で数値計算する方法である。科研費交付期間中に任意形状の移動物体からの反射波や回転する物体からの反射波と特性について詳しいデータを得ることを目的として研究を進めてきた。平成7年度は振動する2枚の導体平板間のパルス波について数値計算を行い,J.Cooperによる厳密解とのよい一致を得た。この結果は,電子情報通信学会誌(1995年12月)に掲載された。平成8年度は自由な運動をする移動物体からの反射波の解析を行うため,まず回転する物体内の電磁波についてこの手法を用いて数値解析を行った。この結果は,1996年3月の全国大会,10月の電気学会電磁界理論研究会で発表した。また,任意方向に移動する方形物体からの散乱波についての解析を行い,厳密会とのよい一致を得た。この結果は,1997年3月の全国大会で発表した。さらに同年5月の電気学会電磁界理論研究会で発表した後,論文誌に投稿の予定である。このように移動境界適合座標系の電磁界問題での応用について研究を行い,厳密解との比較,検討を重ねてきた結果,ほぼ所期の目的を達成できると同時に,この手法の有効性を確認でき,広く役に立つ手法を確立できたと考える。
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