本研究では、平面上の音場のデータから音響ホログラフィ法を用いて、物体の振動面の速度を計測することを意図している。それゆえ、まず、データ収集のパラメータを如何に具体化するかを検討した。すなわち、再構成される振動面の分解能を所望の値にするために、また、映像系としての広がり関数のサイドローブやグレーティングローブに基づくアーチファクトの影響を低減するために、データ収集面の位置、収集する範囲、サンプリング間隔などをどう選ぶかを数値シミュレーションと縮尺されたモデル実験により検討した。 これまで、これらのパラメータは振動体が点として考えられるときは、空間周波数領域での理論を用いて、比較的容易に数式で表すことが出来た。しかしながら、本研究は面の振動モードに注目するために、振動体を点と仮定するわけには行かない。そのため、ここでは、各パラメータごとに数値シミュレーションを詳細に行って検討した。その結果、やはり、これまで知られた数式で得られる結果よりも分解能の条件は、2割程度厳しくなることが分かった。また、グレーティングローブの影響は、ここで用いる限りでは、ほとんど考慮する必要もないことも分かった。 この結果を目途に、高い周波数(短い波長)により縮尺された規模でのモデル実験を行った。すなわち、2Mhzの正弦波で駆動される円盤トランスジューサの表面の振動速度を計測した。PVDFを用いてハイドロフォンを手作りし、それをX-Yステージに取り付けて、面上の音場をサンプルした。ステージの駆動回路、制御回路も手作りした。得られたデータからのトランスジューサ表面の再構成像は、しかしながら、数値シミュレーションの結果とは現在のところ、必ずしも、良い一致を見ていない。その理由を目下検討中である。
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