本研究では、生体内で使えるようなマイクロポンプなど生体内マイクロアクチュエータ系を超音波で構成し、その設計指針や動作特性を明らかにすることを目的としている。本手法を構成する上で重要な点は、微粒子選択と超音波の周波数、音圧の設定である。本年度は、まず任意の粘性と密度を持つ液体中での微粒子の運動跡を逐次計算できるシミュレーションプログラムを作成し、基礎的な検討を行った。この結果、血液のような粘性液体中でも条件を選べば、マイクロポンプ作用が生じること、またマイクロポンプ以外にも、同様の構成でたとえば血栓部位などを削るマイクロスクレーパ系などができることを提案し、関連の学会で報告している。これらの検討に基づき、ポリビニリデンフィルムを用いた模擬血管系と専用の超音波照射系、およびその制御系を試作し、実験を開始した。この実験系は、周波数4MHzから15MHzまでの超音波を照射できるようになっており、目的に応じて超音波の周波数を変えられるようになっている。また、模擬血管中での微粒子の動きは、体顕微鏡にとりつけたビデオカメラを通じてモニタできるようになっている。半径20μmのポリスチレン粒子と半径35μmの酸化アルミニュウム粒子を用いて実験を行ったが、ポリスチレン粒子を用いた実験では所のマイクロポンプ作用が生じること、また酸化アルミニュウムを用いた実験では、模擬血栓を削るマイクロスクレーパ作用が起こることを確認できた。これらの実験から、超音波の周波数、音圧、微小粒子の濃度、その直、液体の粘性などの影響を詳細に調べた。今後、医学分野の研究者の協力を得て、動物血管を用いたin vitroでの実験を試みる予定である。
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