現在、動脈硬化や血管内血栓など循環器系疾患は成人病の大きな割合を占め、これら疾病の早期診断と治療は大きな課題になっている。これら疾患の治療法として、血管内にカテーテルを挿入して病変部を削除するなどの方法が試みられているが、この方法は本質的に侵襲的な方法であるが故に患者に大きな苦痛を強いる。また、近年マイクロマシン技術を用いた血管内ロボットも提案されているが、メカニズムの信頼性、エネルギー供給法、小型化、生体への安全性など乗り越えねばならない課題は多いように思える。本研究では、最終的には血管内で使える各種循環器疾患治療用のマイクロメカニズムを超音波と微粒子で構成する方法を研究することを目的としている。本方法では、生体表面に当てた2つの超音波振動子から周波数のわずかに異なる超音波を当て、患部相当の場所に超音波の定在波を作る。この時、あらかじめ血液中に無機微粒子やマイクロバブルなどを入れておくと、微粒子は超音波の定在波から力を受け、自由に動くようになる。たとえば、一方向に微粒子を動かせばマイクロポンプができるし、往復運動をさせればマイクロスクレーパが、また超音波の力で薬液の入っているマイクロバブルを患部に留めればドラッグデリバリシステムが構成できる。我々は、上記、マイクロポンプ、マイクロスクレーパ、ドラッグデリバリを目標とした微粒子のトラッピングについて模擬血管系を含む基礎実験系を本補助金で試作し、実験を行った。この結果、in vitroであるが当初の目標を達成することができた。これら得られた成果は、第65回日本超音波医学会公開討論会「めざせ超超音波」、第13回コントラストエコー法研究会での特別講演で報告し、さらに関連の学会に原著論文、解説論文として公表した。
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