研究概要 |
本研究では,生体組織の音速や音波伝搬減衰などの音響特性量を指標として病変の進行を定量的にとらえる定量診断技術を発展させるため,生体組織構造の不均一を考慮した2次元超音波減衰分布の高精度計測法を開発することを目的としている。 本年度は,水槽中にさまざまな生体高分子を用いて構造をもった擬似生体試料を作成し,ここを伝搬する音波の状況を観測した。振動子より送波された超音波は反射板で反射し再び振動子で受波される。周波数としては3.5MHzから100MHzについて行った。音波の散乱状況などを観察しながら音波散乱の効果と吸収の効果について検討した。この結果,これらの効果を十分な精度で分離できる見通しを得た。次に,この擬似生体試料の成分比を変化させたり,温度変化などによる物理的,化学的変化を与え,病変などの生体組織の構造変化と音響伝搬特性の関係について考察をすすめた。今年度,購入したファンクションジェネレーターとコンピュータにより超音波の送受波はコントロールされ,得られた受波データはコンピュータに転送され処理された。音波伝搬状況の観測結果をもとに,従来の均質媒質での音波伝搬理論に代わる,生体組織の構造と減衰特性の関係についての伝搬モデルを考察し,基礎的な処理法を構成した。生体組織の不均質について考慮し散乱と吸収の区別を明確にした計測法と,注意深い試料の選択により十分な精度での計測が可能になることがわかってきた。これは,当初の計画を十分満たしており,今後,実際の生体組織の測定による基礎データ収集につながるものと考えられる。
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