本研究では、柔軟関節を持つロボットマニピュレータに対して、ゲインスケジューリング・ロバスト制御の実施を試み、関節角度の大域的な動きと弾性要素の不確かさに対して頑強に制御性能を保持するコントローラの設計を行なった。 本研究実績の概要は次のようにまとめられる。 1.まずはじめに、柔軟関節を持つロボットマニピュレータのモデリングを行なった。ここでは対象とする柔軟関節ロボットにおいて、関節の弾性カップリングをばね要素でモデル化することにより、その運動方程式を導出した。つぎに導かれた非線形微分方程式に対して、複数個の動作点を設定したうえで、その各動作点ごとに線形化を施し、数学モデルの表現を求めた。 2.数学モデルに基づき、制御系設計のための問題設定を行なった。まず柔軟関節ロボットにおいては、関節弾性係数に不確かさが存在するため、この不確かさを考慮したモデルを記述した。つぎに目標値追従特性を系の制御性能として設定した。そして、どのような関節角度においても望ましい目標値追従特性をロバストに達成するコントローラの設計問題を考えた。 3.設定された制御目的を満足するように、柔軟関節ロボットの制御系設計を行なった。まず、各動作点ごとに設定されているロバスト制御問題に対して、ここでは構造化特異値に基づいたロバスト制御法により、コントローラを設計した。つぎに、これを関節角度をパラメータとしてスケジューリングを施した。これにより、ゲインスケジューリングされたロバスト制御系の設計を進めた。 4.計算されたゲインスケジューリング・ロバストコントローラを実現するためのリアルタイム制御用ソフトウェアを開発した。つぎに、開発された制御用ソフトウェアを実験装置に移植し、ロボット制御実験を実施した。最後に、得られた実験結果を解析し、これに関する検討を行なった。
|