本研究は、移動体(搬送車)の自律走行の誘導方法に関する研究である。 具体的には、天井蛍光灯を目印として移動体を誘導する。この天井蛍光灯の特徴としては、一般シーンの中で検出が容易であり、多くの室内環境において設置されているということが挙げられる。特に、画像処理の中で最も困難な処理である物体の識別が、蛍光灯(発光体)ではカメラのアイリスを絞ることで瞬時に実現するという非常に有効な利点がある。システムは、カメラ・パソコン・走行機構およびそれらの間のインターフェース回路から構成される。いずれも汎用的な部品を使用した。 研究のテーマとしては次の二つに大別できる。 1 天井蛍光灯をガイドに用いて移動体を制御する方法 簡単な構成・安価・安定であり、工場内などの稼動移動体システムと容易に置換できるという特徴がある。蛍光灯検出方法などを工夫した結果、実用的な走行速度で、直進走行(蛍光灯の長軸短軸両方向)および転回走行を実現した。これらにより実用的な走行経路を実現できるため、モデル的な工場内における走行の様子を示した。発表論文に対して1996年度システム制御情報学会学会賞論文賞が授与された。 2 天井蛍光灯から位置計測を行い移動体を制御する方法 上のガイド方式より汎用的な走行を実現できる。まず蛍光灯からの位置計測方法を確立した。次にKalmanフィルタを用いて移動体のオープンループ制御の操舵量を推定し、走行制御を飛躍的に改善することができた。さらに、移動体の正確な走行を実現するための位置計測方法について深い検討を行った結果、蛍光灯の位置を計測すると同時に移動体走行軌道の指導も行う手法を考案した。本手法は、走行する現場にて計測を行うため、設計図に現れない情報も考慮できるという利点がある。なお、この手法は、発光体以外の一般物体の位置計測についても適用できる意義のある研究と考えている。
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