本研究の目的は、既に開発したヒトの筋運動制御の特性を取り入れた筋電義手に感覚フィードバック装置を追加し、その有効性を限界を示し、実用化の可能性を明らかにすることである。以下、実施した研究項目について成果をまとめる。 1.感覚フィードバックの情報伝達方式の決定 本研究で試作した感覚フィードバック装置では、義手の把握力を、皮膚に対する振動刺激で義手装着者に伝達する。そのために変調方式、振幅、刺激を与える部位などの情報伝達方式を決定した。変調方式は振幅変調を採用し、刺激提示部位は前腕義手のソケット内に収まるように前腕屈側中央部とした。 2.振動刺激周波数の決定 振動刺激を行う周波数は、その振動に対して最も敏感な周波数を選択することが必要である。健康成人男子3名の前腕部に1〜700Hzの振動刺激を提示し、各周波数で、振動を感知できる最小の振幅を測定した。その結果、250〜350Hz付近で最も振動刺激に対する閾値が低かった。しかし、この周波数で振動刺激を行うと、振動音が発生し、義手装着者に不快感を与える。そこで、可聴周波数以下の領域で、振動刺激に対する閾値の低い10Hzを採用した。 3.感覚フィードバック装置を備えた筋電義手の試作 試作した義手は、日常生活において携帯可能なものとするため、電子制御回路の小型化をはかった。 4.感覚フィードバック装置を備えた筋電義手による物体把握実験 開発した筋電義手を健常者に装着し、義手を監視できない状況で物体把握実験を行った。その結果、感覚フィードバック義手の制御性を向上することが明らかとなった。
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