現有する磁気力分布測定装置と本年度試作した引っ張り試験機を用いて、引っ張り応力と記憶磁場の関係を明らかにすることを試みた。具体的には(1)油圧式単軸引っ張り試験機に引っ張り力測定装置を取り付けて、高精度な引っ張り試験機を構築し、これを用いて歪みや応力と磁気力の関係を求め、それをもとに変態の臨界応力やそれに及ぼす外部磁場の影響を検討した。その結果、オーステナイト系ステンレス鋼に共通した特性として、応力誘起相変態に伴う磁場凍結効果が存在することが明らかになると同時に、その効果は、応力に対する材料の鋭敏性と強い相関があることが明らかになった。しかし、一方で、この相関には材料学的矛盾があり、今後、この関係を検討するにはより精密に制御した熱処理が必要であることがわかった。また、現有する2次元磁場分布測定装置を用いて印加磁場の分布と記憶磁場の分布を比較したところ、近似的にではあるが、両者に相似則が成り立つことがわかり、凍結磁場による2次元磁場計測の可能性が確認できた。(以上は石垣博行が担当) また、現有する炭酸ガスレーザに精密位置決めテーブルを取り付け、2次元レーザ加工システムを構築し、レーザ表面処理による変態の感度向上の可能性や、磁場消去の可能性を実験的に検討した。その結果、炭酸ガスレーザの出力を50W程度に絞ることにより、磁場の消去が可能になることが分かった。また、100W以上の高出力域では熱応力による相変態の進行が発生し、磁場消去には不適当であるが、磁場の書き込みには有効である可能性が高いことが明らかになった。ただし、現在までの所、レーザ照射による変態の感度向上の顕著な効果は観察されていない。(以上は小西康夫が担当)
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