昨年度の研究により、オーステナイト系ステンレス鋼をマルテンサイト鋼へ応力誘起変態させるときの磁気特性変化を磁場中で行わせることにより、外部の磁場情報をステンレス鋼に残すことができるのを明らかにした。今年度はこの凍結された磁場と加えた応力の関係を詳細に調べ、引張応力と凍結磁場の間には高い相関があり、塑性ひずみ量と磁気力とはかなり線形な関係を有することが明らかになった。ただし、塑性ひずみ量が増大すると凍結された磁場分布が外部磁場に対し大きく歪むことから、最適な引張応力の存在が明らかになった。この値は材料によって異なるがSUS301の場合で410MPa程度である。この条件下で20Gauss程度の磁場分布が凍結される。さらに、凍結された磁場は少なくとも2ヶ月以上保持され、凍結された磁場と同方向の外部磁場に対しては極めて安定であることが分かった。しかし、逆方向の磁場に対しては少し不安定である。(以上、石垣博行が担当) 昨年度はレーザ照射によりステンレス鋼内の磁場の消去が可能であることを確認したが、今年度は照射条件を上げて実験を行ったところ、レーザ照射によっても磁場は凍結されることが分かった。ただし、その凍結された磁場は引張応力によるものに比べ遙かい小さい。以上のことから、画像を記録する写真機に対応し、磁場情報を記録する磁場凍結システムが構築可能であることが分かった。ここでは、写真フイルムに代わるものとしてステンレス薄板を、現像に代わるものとして磁気力分布測定があり、また、シャッターに代わるものとして引張応力だけでなく、レーザ照射も存在しうることが明らかになった。(小西康夫が担当)
|