研究概要 |
本研究において,オーステナイト系ステンレス綱をマルテンサイト変態させるときの磁気特性変化を磁場中で行わせることにより、外部の磁場情報がステンレス綱に残ることが明らかになり,これの応用として任意の瞬間における磁場凍結の可能性を探った。その結果以下の知見が得られた。 1.凍結された磁場と加えた応力の間には高い相関があり、塑性ひずみ量と磁気力とはかなり良好な線形関係を有する。 2.塑性ひずみ量が増大すると凍結された磁場分布が外部磁場に対し大きく歪むことから、最適な引張応力の存在が明らかになった。この値は材料によって異なるが、SUS301の場合で410MPaである。 3.凍結された磁場は少なくとも2ヶ月以上保持され、凍結された磁場と同方向の外部磁場に対しては極めて安定であることが分かった。しかし、逆方向の磁場に対しては安定度が劣る。 4.レーザ照射によるステンレス綱内の磁場の消去が可能である。 5.照射強度を上げると,レーザ照射によっても磁場が凍結される。 以上のことから、画像を記録する写真機に対応し、磁場情報を記録する磁場凍結システムが構築可能であることが分かった。しかも,写真機のシャッターに相当する凍結のトリガーは引っ張り応力とレーザ照射の2種類が考えられる。 さらに,凍結された磁場を用いることにより,リニアゲージなどのセンサや,マイクロ磁気アクチュエータへの応用の可能性があることも明らかになった。
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