本研究は、材料の疲労度を、磁気特性の測定から非破壊での検出の可能性を検討したものである。まず、本年度の研究では材料に疲労を付与するための疲労試験機を製作した。この疲労試験機を用いて炭素工具鋼、冷間圧延鋼板およびけい素鋼板について疲労を付与し、単板磁気試験器により磁気特性を測定した。測定は、疲労と比透磁率、残留磁束密度、保磁力、鉄損の関係、および測定周波数の関係について行い、疲労が顕著に現れる磁束特性についての検討を行った。。 この結果、炭素工具鋼では疲労初期に励磁周波数50Hzの測定において比透磁率の低下が見られること、冷間圧延鋼板では10、50kHzにおいて同様に疲労初期に比透磁率の低下が見られることを見いだした。残留磁束密度については比透磁率と同様の変化傾向を示し、保磁力より大きな変化を示すことが明らかになった。しかし、これらの傾向は、それほど顕著ではなく、今後更に多くの試料による検討が必要である。 又、現場における構造物の非破壊検査装置の開発を目標として、簡易磁気測定器を試作し、それを用いて特性測定を行っている。この測定器では磁束密度の測定には探針法を用い、磁化の強さの測定にはHコイル法を用いている。この測定器では基本的に試料を使用状態のままで、比較測定が行えるものと考えている。今後、測定制度、安定性、再現性などについての検討が必要である。この測定器が完成すれば、現場での疲労検出が可能となる。
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