鉄筋コンクリート構造物の早期劣化の問題が指摘されて久しいが、厳しい塩分腐食環境下におかれた鉄筋コンクリート構造物では比較的短い期間に何らかの形で鉄筋腐食に伴う劣化・変状が現われるのが通常である。鉄筋コンクリート構造物の維持管理や補修法を決定するための検査法には、コンクリート中の鉄筋とかぶりコンクリートの状況を現場にてリアルタイムに把握できることが重要であり、また将来にわたる鉄筋腐食の進行を初期段階にて精度良く予測するには、かぶりコンクリートの塩化物イオン、酸素の透過性および鉄筋に対する保護機能を総合的に判断できるような検査法が望まれている。このような観点より、コンクリートの塩化物イオン透過性を迅速に評価できる試験法を開発し、本試験法によるかぶりコンクリートの新しい検査法の開発を試みた。 まず、電気化学的な手法を用いた促進塩化物イオン透過性試験を開発し、高炉スラグ微粉末コンクリートの塩化物イオンの拡散係数に及ぼす配合(水結合材比、高炉スラグ置換率)および養生の影響について検討した。次に、急速塩化物イオン透過性試験(AASHTO T277)及び交流インピーダンス法による比抵抗値の測定も同時に実施し、各種塩化物イオン透過性試験間の測定値の相関性についても検討した。 その結果、新しく開発した促進塩化物イオン透過性試験により、高炉スラグ微粉末コンクリートの塩化物イオン拡散係数を短時間に算定できることが確認された。また、高炉スラグ微粉末コンクリートでは、水結合材比の大きなものでも高炉スラグ置換率および材齢を適切に選択することにより普通セメントコンクリートと比較して塩化物イオン拡散係数を大きく低減できることが明かとなった。さらに、本試験法より求めた塩化物イオン拡散係数は急速塩化物イオン透過性試験(AASHTO T277)より求めた塩化物イオン透過量(クローン)及び交流インピーダンス法による比抵抗値とも良好な対応関係があった。
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