平成8年度には、コンクリートの高性能化の動向に関する検討、短繊維補強コンクリートに適した補強材用に関する検討、ならびに高靱性な繊維補強コンクリートへの仮想ひび割れモデルの適用性に関する検討を行った。 1.コンクリートの高機能化に関する検討 材料の高機能化を推進する際の動機を、(1)問題点の解決、(2)競争力の強化、(3)魅力の向上、(4)社会的要請に分類し、働く人にとっての働きがいや魅力の重要性を指摘した。高機能な材料を開発し提供する側と採用し発注する側のそれぞれにとっての要点を、コスト、機能評価、体質や制度、規準類等の面から考察した。 2.短繊維補強コンクリート用補強材に関する検討 短繊維補強コンクリートを補強する補強材としては、降伏棚が無く、弾性係数が小さいものが、曲げ部材として大きな耐荷力と靱性を得るには望ましく、この点で鉄筋よりはFRP連続繊維補強材が優れていた。降伏棚のある鉄筋を用いた場合に比べ、降伏棚の無い鉄筋を用いた場合にはひび割れの集中が遅れるため、曲げ部材としての耐荷力は10%以上大きくなり、最大荷重時の変位も50%以上大きくなった。 3.高性能な繊維補強コンクリートへの仮想ひび割れモデルの適用性に関する検討 仮想ひび割れモデルに基づく引張軟化曲線は、コンクリートの破壊性状の評価に有用であるが、繊維補強コンクリートへこのモデルを適用する場合の限界について検討した。鋼繊維補強コンクリートの場合、繊維混入量が2%までは、曲げ破壊挙動がほぼ1本のひび割れによって支配され仮想ひび割れモデルを適用できるが、4%以上では、複数のひび割れが生じモデルを適用できず、引張軟化曲線による評価が行えないことを明らかにした。
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