本研究においては、コンクリートの引張軟化曲線の推定方法を確立したうえで、曲げに対して硬化型の挙動を示す高性能な繊維補強コンクリートの破壊性状について検討することを目的としている。 (1)引張軟化曲線の試験方法 実験で得られた荷重変位関係から、引張軟化曲線を多直線近似法により高精度で推定する方法を提案した。 載荷試験時に計測する供試体の変位として、載荷点変位に比べ開口変位は、支点の沈下等の影響を受けず、簡便に精度の良い実験データを得ることができるため、引張軟化曲線の推定に適していることを明らかにした。 (2)高性能な繊維補強コンクリート 曲げに対して硬化型の挙動を示す高性能なアラミド繊維補強モルタル(曲げ強度20MPa)に加え、鋼繊維やビニロン繊維を多量に(最大繊維容積混入量6%)混入した高性能な繊維補強モルタルを開発し、その特性を明らかにした。 はり供試体の曲げ試験において、ひび割れ発生荷重よりも最大荷重が十分大きい場合には、供試体側面に複数のひび割れが分散して発生することを実験的に確認した。 仮想ひび割れモデルに基づく引張軟化曲線について、繊維補強コンクリートへの適用限界について検討した。鋼繊維補強コンクリートの場合、繊維混入量が2%までは、曲げ破壊挙動がほぼ1本のひび割れによって支配されるので、仮想ひび割れモデルを適用できるが、繊維混入量が4%以上の場合には、複数のひび割れが生じ仮想ひび割れモデルを適用できず、したがって引張軟化曲線による性能評価が行えないことを明らかにした。
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