マスコンクリートでは、セメントの水和熱に起因する温度応力がコンクリート打込み直後から生じる。打込み直後は、コンクリートがフレッシュな状態から硬化していく過程にあり、応力が小さくてもクリープひずみはかなり大きくなる可能性がある。そして、水和反応による温度履歴とともに、生じる応力も圧縮から引張へ転じるため、非常に複雑な挙動を示す。したがって本研究では、若材齡時のコンクリートのクリープ挙動を解明するための実験を行うとともに、温度応力解析に適用できるクリープモデルを構築した。 実験では応力強度化、載荷材齡をパラメータとして、水セメント比55%の若材齡コンクリートの圧縮および引張クリープ試験を行った。その結果、以下の知見が得られた。 圧縮クリープは、応力強度比50%以下で載荷応力とクリープひずみの線形性が成り立ち、それ以上では載荷応力の影響を受ける。これは、従来言われている線形性の成立範囲である40%よりも大きい。一方、引張クリープは、載荷材齡3日、5日では、応力強度比20%以上については載荷応力とクリープひずみの線形性は成り立たない。しかし、載荷材齡7日以降には線形性が成り立つ傾向にある。また実験の範囲内では、同一応力強度比の引張クリープひずみは、載荷材齡に関わらずほぼ等しいことが明らかとなった。 これらの結果をもとに、若材齡コンクリートのクリープひずみを5要素レオロジーモデルで表すことを試みた。圧縮クリープひずみは載荷期間、応力強度比、載荷材齡をパラメータに、一方、引張クリープひずみは、載荷期間、応力強度比をパラメータにして表すことにより、クリープ挙動を精度よく推定することが可能となった。
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