本研究においては、発水材としてシランを用い、シラン含浸されたコンクリートの発水性を評価し、シランの効果を把握した。具体的には、小型供試体を用いて、重量変化率および切断面等からシランによる発水効果の長期安定性を検討した。また、大型供試体によって、相対湿度・温度測定装置により、種々のレベルのかぶり深さでのコンクリート中の水分分布を測定し、現実の構造物における発水効果範囲の検討を行った。さらに、実験結果から、水分逸散のモデル化を試み、有効性の定量化を試みた。得られた結果を以下に示す。 (1)アルカリ骨材反応による膨張に関しては、無処理と比較して、長期的にある程度抑制することは可能である。しかし、反応性骨材を用い塩化物を多量に含むコンクリートに対しては、シランで処理したものでも過度の膨張を完全に抑制することは困難であると考えられる。 (2)鉄筋腐食に関しては、塩化物を多量に含むものについては、無処理物と比較してシラン処理したものがむしろ腐食が進行している傾向が見られた。シラン処理により長期的に鉄筋腐食を抑制することは困難であると考えられる。 (3)大型供試体による試験の結果、有限要素法による解析により、コンクリート中におけるシランの効果範囲をある程度推定することは可能であると考えられる。解析結果および大型供試体の実験結果を検討した結果、シラン処理した後、60日頃ではシラン処理による発水効果はコンクリート表面から約5cm付近まで、180日頃では約20cm付近までとみられた。180日頃から360日頃までは、乾燥と湿潤を繰り返しており、発水効果範囲は約20cm程度にとどまっていた。深さ30cm以上では、無処理とシラン処理の差は見られないものと思われる。
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