研究概要 |
SHAKEと呼ばれる等価線形化法による地盤震動解析プログラムは、約20年前にカリフォルニア大学バークレー校で開発され、その簡便さ故に研究者のみならず多くの実務の場で用いられてきた。しかしながら、与えられた基盤地震動に対する堆積層を有する地表面での地震動をこのプログラムで計算すると、実地震記録と比較してとくに高周波数領域において計算結果が小さくなることが指摘されてきた。この傾向は、とくに軟弱地盤で大きいことが広く認識されている。等価線形化法の基礎となる重複反射理論は,有限要素法のような補完等をいっさい含まない数学的に整然とした手法であるが、実用上問題となるのは、解析で用いる土の剛性と減衰定数の評価法である。近年,大規模な地震が多数発生し,軟弱な地盤での地震動被害が多く報告されているが,これまでの解析法から推定される地盤震動と地震被害の実状との矛盾が関連学会において最近とくに注目されるようになり,信頼度の高い地盤震動解析法の確立が緊急の課題となってきている。 本研究は、従来の解析法における上記の問題点が生じる物理的な原因を指摘し、実務的にも有用な等価線形化法の改良法を提案し,解析法の高精度化を図ろうとするものである。提案しようとする手法は、「地盤の地震応答における地盤ひずみとせん断剛性・減衰定数の関係は、そのひずみ波形への各周波数成分の寄与率が異なることから、周波数成分に相応した剛性および減衰を与えることが必要である」という観点に立つものである。本研究では,このような各周波数成分の寄与率に応じた等価な剛性と減衰の評価法を検討し、これまでの手法では適用できなかった軟弱地盤の地震応答解析における等価線形化法の定式化を行なった。 提案した手法の検証には、詳細な地盤調査が行われたアレー観測点での強震記録を用いている。また、著者らが中心となって作成したわが国の地震動アレー観測記録のデータベースを利用した。
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