研究概要 |
平成7年度はコンクリートの標準供試体(径15cm,高さ30cm)の内部に径10cm、高さ29cmの鉄筋篭(主鉄筋 6mm 6本,帯鉄筋3mm 4段)を設置して圧縮試験を実施した。本来は曲げせん断試験の方が現実的であるが、その場合は境界条件を統一しにくいので、統一しやすい圧縮せん断試験とした。鉄筋篭にはせん断補強鉄筋を考えられうる形状で配筋し、無筋コンクリートも含めて合計17種類の供試体を準備した。それぞれの供試体には4方向に軸ひずみゲージを張り付け、アムスラ-の4隅にダイヤルゲージを設置した。コンクリートは設計基準強度 280kgf/cm^2で、水セメント比 55%である。 圧縮試験の結果、最大耐力は帯鉄筋の本数に応じて増加する。その場合、形状が十字、キ印などのせん断補強筋の存在は耐力の増加にほとんど寄与していない。しかし、無筋コンクリート、帯鉄筋のみのコンクリートの場合は最大耐力到達後に残留耐力が急激に(不連続に)低下するが、せん断補強筋を配置したものでは緩やかに(連続的に)低下し、同一軸変位では残留耐力は2倍以上の値を保持している。即ち、コンクリートが圧壊した後でも残留耐力の急激な低下はなく、粘り強い力学性状を有することが判明した。 最大耐力にせん断補強筋が寄与しない理由は供試体の形状が円筒であるためにコンクリートのポアソン効果による半径方向の変形に帯鉄筋の引張強度が最大限に発揮され、せん断補強筋の伸び抵抗に優先したものと考えられる。そのために平成8年度は橋脚の通常の形状である矩形断面図の供試体で同様の圧縮試験を実施して帯鉄筋とせん断補強筋が破壊防止と靱性の向上に果たす役割を確認する必要がある。一方、小径の鉄筋篭を内側に配置する2重配筋は鉄筋量が多くなるものの、最大耐力、残留耐力の向上に効果の大きいことも確認された。
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