平成8年度は前年度の標準供試体(径15cm、高さ30cm)の圧縮試験に引き続き、角柱(133mmX133mm、高さ300mm)の供試体を製作して同様の圧縮試験を行った。両者の試験結果を比較することにより円形と正方形供試体の形状の相違に対するせん断補強強筋の効果を調べるものである。鉄筋篭は前年度の径100mmに対して83mmX83mmの正方形とした。両者のコンクリート断面積と鉄筋かぶりは等しいが、鉄筋篭の内部面積は1:0.88の関係にある。コンクリートの設計基準強度280kgf/cm^2、水セメント比55%は同一である。 圧縮試験の結果、最大耐力は前年度同様に帯鉄筋の本数に応じて増加する。最大耐力の値は前年度と差はないが、無筋コンクリートの値より15%低いという結果になった。鉄筋篭の外側と内側のコンクリートの側方拘束そ相違によるものと推定される。断面内部の水平面上のせん断補強筋の存在は円形の場合よりは最大耐力の増加に貢献しているが、円形の場合と同様にコンクリートの圧壊後の残留耐力の確保、すなわち破壊後も軸歪が連続的に進行し、残留耐力も徐々に低下させる点が評価できる。 最大耐力の向上に著しく貢献するのは鉄筋篭の内部を斜めに交差した補強筋および小型の正方形鉄筋篭の二重配置である。特に後者は残留耐力の確保にも効果が大きい。小型の供試体は35mm四方、50mm四方のものを用いたが、35mm四方の方が優れた結果となった.この他、水平面のせん断補強筋に1本の軸方向鉄筋を加えた配筋方法も同様の結果を示している。これらから終局耐力の向上や靱性の確保には軸方向の配筋が有効と推定されるが、次年度はその方面の検証を進めたい。また、長方形断面の供試体も製作して中間帯鉄筋の効果についても検討する予定である。
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