北陸地域で発生する地すべりは、4〜5月の融雪期、7月末の梅雨の末期と12月末の降雪期前の集中豪雨期に集中している。またこれらの地すべりのほとんどが過去に地すべり履歴のある再すべりであるといえる。したがって今後の地すべり発生を防止するためには、地すべり面の土のせん断強さを明白にしなければならない。 従来すべり面の土のせん断強さを知るためには、リングせん断試験を行ってきたが、この試験では大直径の供試体を必要とするため、ボーリング調査で採取された小直径の供試体で試験を行うことができない。そのために本研究では、一般に使用されている一面せん断の原理を利用して地すべり面の土のせん断強さを解明しようとしている。本年度の研究成果の概要は以下のとおりである。 1.一般の一面せん断箱の上箱と下箱の接触面を線接触となるように切断して、供試体には前もってせん断面を設けて、繰返しせん断試験を行ったが、得られた残留強さはリングせん断試験で得られた残留強さの約1.6倍であった。 2.上記の欠点を避けるために上箱と下箱の間に5枚のリングを挿入し、前もってせん断面を設けてせん断すると、正規圧密状態では粘着力c_γは零となったが、内部摩擦角φ_γはリングせん断試験によるφ_γより2〜7°大きくなった。 3.さらに、2.に述べた装置の欠点を修正するために、本年度はせん断箱の間に挿入するリングの数を任意に変化させ、間隙水圧も測定しうる新しいせん断箱を作製し、それによって繰返し一面せん断試験を行っている。しかし本年度は予備試験として、供試体にせん断面を挿入していない試験法をとったのでc_γ≠0でφ_γもかなり大きくなる結果となった。この点の試験の検討は平成8年度に行う。
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