修正応力t_<ij>を用いた粘土・砂の構成モデルを使ってトンネル掘削(降下床)問題の有限要素解析を行った。解析は掘削過程を考慮した3次元解析と掘削過程を考慮しない2次元平面ひずみ解析の両方で行った。その結果、同じトンネルのゆるみ(降下床変位)を与えたとき、粘土の地表面沈下は砂の地表面沈下よりも大きくまた、広く分布することが解析で示された。さらに、砂の場合掘削過程を考慮した3次元解析の沈下量は2次元解析の結果より小さいが、粘土の場合逆に3次元解析の沈下量は2次元解析の場合よりもはるかに大きくなることも示された。ここに、粘土と砂の沈下量の差は両材料のダイレイタンシー特性の差異つまり粘土はせん断により体積圧縮(負のダイレイタンシー)を示すのに対し、砂は体積膨張(正のダイレイタンシー)を示すことによる。また、2次元と3次元解析の差は、3次元解析では掘削進行方向の切羽に沿う面のせん断も考慮するため、粘土と砂の沈下量特性の差異がさらに明確になる。 これらの解析から得られた結論を検討するために、トンネル掘削をシミュレートできる3次元トンネル掘削モデル試験機を試作した。この装置ではトンネルの掘削進行方向に向かって10個に分割された降下床を設置し、それを順次降下させることにより掘削過程をシミュレートした。また、10個を同時に降下させた時は2次元平面ひずみ状態の解析に対応した実験となる。実験は解析の1/100のスケールで行ったが、上述の解析結果と対応する実験結果が得られた。 以上、本研究ではトンネル掘削を例に、地盤の変形予測では3次元的な施工過程の評価が必要であることを解析・実験の両面から明らかにした。
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