研究概要 |
NATMがわが国に導入されて以来,20数年が経つにもかかわらず,その力学的原理について詳細な説明がなされたことはないし,力学的な計算に基づく合理的な設計法が提案されたこともほとんどないといえる.その理由は,NATMの力学的側面が十分にモデル化されていないことにあると思われる. NATMの特徴は,いうまでもなく「吹き付けコンクリート」の積極的利用である.ここでは上記のことを踏まえて,比較的被りの浅い土砂トンネルを想定し,NATMにおける「吹き付けコンクリート」を「薄肉柔支保工」ととらえながら,簡単な数値計算を通してその効用をとらえることを試みた. 薄肉柔支保工を平面内で力学的に表現するために,剛棒を回転バネで接続した半円形のモデルを用いた.この仮定は,シールドセグメントに対する「はり-バネ」モデルに類似している.しかし,ここでははりに相当する部分は剛体とし,履工の変形は2つの剛体棒の間にある回転バネのみに帰着させるので,「剛体棒-バネ」モデルということができる. 本年度の研究における結果を以下に記す. (1)円形アーチ支保には大きな曲げモーメントは発生しない. (2)圧縮による破壊(圧壊)を考慮しなければ,相当薄い吹き付けコンクリートあってもトンネルを安定に保つ能力がある. (3)地盤反力と支保の相互作用がトンネル周辺の力学的安定にとって本質的である. (4)厚さの大きな支保では,薄い支保と比べて大きな曲げモーメントが発生し曲げ破壊を起こしやすくなることがある. (5)たとえ,大きな曲げモーメントにより曲げ(引っ張り)破壊が生じたとしても,かならずしも不安定な構造になるとはいえない. (6)最適なアーチ形状を選ぶにあたって,側方土圧係数の評価が重大である.
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