本研究では、自然堆積粘土の持つ年代効果を定量的に把握するとともに、年代効果を有する粘土および地盤を実験室内で人工的に作り出すことを最終目標として、次の3つのステップで研究を行った。 ステップ1:年代効果を有する粘土の力学挙動の把握 ステップ2:粘土の粒子構造を定量的に評価する方法の開発 ステップ3:高温再圧密による年代効果の再現 このうち平成8年度は、前年度に行ったステップ1と2の結果をもとに、ステップ2とステップ3の研究を中心に行った。ステップ2では、粘土の粒子構造を撮影した電子顕微鏡写真をパソコンを用いて画像解析することによって粘土の粒子構造を定量的に評価する方法を開発した。具体的には、粘土試料の水平断面と鉛直断面の電子顕微鏡写真において、直行する方向の濃度分布を測定し、その波形のパワースペクトル解析を行うと、その粘土の粒子構造を定量的に評価できることが明らかとなった。また、ステップ3では、年代効果の再現が可能であると言われている高温再圧密方法で作成した粘土試料の力学特性と粒子構造を前述の方法で調べるとともに、年代効果を有する不撹乱試料および年代効果を持たない室温再圧密試料のそれらとを比較することによって、高温再圧密による年代効果の再現性を粘土の微視的構造を含めて検討した。その結果、高温再圧密粘土はランダム構造、室温再圧密粘土は配向構造に近い構造になっていることが明らかとなった。自然粘土はランダム構造に近い構造であることから、高温再圧密方法によって自然粘土の年代効果を力学特性だけでなく、微視的な構造においても再現していることを明らかにすることができた。
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