砂礫床水路によって多数の射流移動床実験をおこない、次の新知見を得た。 (1)砂礫の移動が活発で射流条件にある流れでは反砂堆が形成され、峰部に大礫が集中することによって2次元反砂堆(リブ)河床が生ずる。 (2)リブ河床の起伏をきっかけとして、水面に3次元的な斜め交錯波が発生する。 (3)斜め交錯水面波の流下方向波長とリブの波長が一致する条件において水面波の共振状態が現れ、水深を超える大振幅の波立ちが生ずるとともに河床が速やかに3次元化し、円弧状のくぼみが発生する。 (4)しかし、(3)の状態は長続きせず、短時間で水面波・河床波ともに消滅し、再び始めのリブ発生に戻って現象を繰り返す。(3)の状態で停水した場合にのみステップ・プールの形成を見る。 斜め交錯水面波とリブ河床の波長が微妙にずれた場合にうねり現象が生じ、ステップ・プールの部分発生を見る。 ステップ・プールは、斜め交錯水面波の波数モードに対応して複列モードのものも発生する。 実験的に明らかにした上述のステップ・プールの成因に関し、流れ-砂礫輸送系における境界面不安定発生の立場から数学モデルによる線形解析を進めた。その結果、 (1)非常に狭い波数域で河床面の境界不安定が発生し、その極大成長率をあたえるステップ・プール波長が実験結果と一致することを確認した。 (2)波数域が狭いことは、3次元水面波が河床起伏と共振状態にあることに対応しており、その不安定領域の狭さがステップ・プールの発生後のすみやかな崩壊という実験事実を説明している。 (3)ステップ・プールは3次元反砂堆であり、斜め交錯水面波が共振状態になることによって形成されるということが理論的に解明された。 (4)しかし、リブについては、実験を説明しうる明確な不安定領域を求めることができなかった。 今後、発生条件の理論の改良をはかり、ステップ・プールの発生領域を平均水理量にて表し、渓流の淵瀬設計計画に使えるようにする必要がある。
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