並列らせん流については、約30年前、河川の洪水流においても存在することが示唆されて以来、その内容に関する研究は現在まで多く行われて来ており、その強度を支配する河床形態の効果や橋脚周辺洗掘への影響等など興味深い成果が得られている。しかし、並列らせん流の構造など基本的な問題や、粗度への影響など実際面に係る問題もほとんど未解決である。そこで本研究では、基本的な面で欠如していた部分をとりあげることとし、平成7年度は相い隣りするタテ渦どうしの干渉過程として並列らせん流を把え、従前のような時間平均的な流れの構造ばかりでなく時間変化する過程を可視化手法を用いて明らかにすることにした。実験は、空気気泡によってタテ渦群を強制的に発生させ、その直下流において形成される並列らせん流を河川において観察された程度の強度に調節して行っている。 まず、強制的に発生させたタテ渦の間隔を変えて実験を行い、水深の2倍の間隔のときが最も安定した並列らせん流となることが判明した。これは、河川における実測結果と一致している。つぎに、従前の研究によると横断面においてそれぞれのタテ渦の線上に渦が並んで存在するとされてきたが、これは時間平均的にみたものであって、瞬間的にはこのようになっていないことが判明した。すなわち、タテ渦の線上では個々の渦が等間隔に存在するが、相い隣りするタテ渦の線上のものとは交互に、千鳥上に存在し互いに干渉しあう形で安定が保たれている。そして、個々の湧昇渦をみると両側の渦の降下部の影響を受けて幅が狭まり、時間をかけてゆっくり、緩勾配に水塊が上昇し、ボイルとなって水面に達したのち、移動点を中心とする同心円上に拡がってから、やや急速に降下する運動を流下方向に繰返している。ボイルから両側に降下する流れは、タテ軸間の速い流れの効果が加わって急激に水路底面に達し、この流れが速い場合には一部隣りのタテ渦に侵入することもあり、湧昇渦の強度に変化を与えている。こういった現象がボイルの平面的・時間的不均一をもたらし、不安定の一因となると共に、横断方向の質量輸送の原因ともなっている。 実験での現象の可視化により、この他にも2次的な渦の細部構造など、興味ある現象が判明しており、さらに詳細な実験を継続するとともに、今後定量的な観測を行うことにより、タテ渦間の相互干渉の内容を解明し、シュミレーション・モデルの構築の検討を実施する予定である。
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