研究概要 |
地震時動水圧や衝撃砕波圧現象を統一的に取り扱うことのできる非線形波動方程式を,圧縮性流体の連続式,運動方程式およびエネルギー保存式を用いて導いた.この波動方程式には,従来より用いられている3次元線形波動方程式に,重力項および2つの非線形頁が付加された形となっており,従来の波動方程式の拡張型と言える.地震時動水圧について,重力項および非線形項の影響を調べた.その結果,重力項の影響は極めて小さく,無視してもよいことが分かった.非線形項の影響度については,摂動法により2次の非線形項の大きさを線形項の大きさと比較したところ,自由水面付近を除いて数%以下の大きさで,かなり小さいことが分かった.さらに,重力項を含む線形項を含む線形波動方程式を用いて,水平振動と鉛直振動が同時に発生する場合の地震時動水圧を解析的に求めた.その結果,斜め45°の時に鉛直壁の働く動水圧が最大となることが分かった.したがって,これまでの水平振動のみを考慮したWestergaadの近似式では不十分であるため,鉛直加速度を考慮した動水圧の評価式を提案した.また,その評価式の適用範囲を理論解と比較して決定し,水深hと圧縮波の波長CsTとの比が0.1以下であることが示された. 砕波衝撃圧への理論の適用性を検証するために,今年度は直立堤に作用する衝撃砕波圧に関する実験を行った.最大波圧と作用時間との関係や波の条件との関係を詳しく調べた.無次元最大波圧は,波高水深比が0.9前後で最大となる傾向にあり,無次元作用時間については波高水深比が大きいほど小さくなる傾向にあることが明らかとなった.Bagnold型の砕波圧の予備計算を行ったところ,音速が100m/s程度まで低下していることが実験値との比較より明かとなった.このことにより,砕波衝撃圧の解析モデルを作成するにあたり,気泡混入による水中音速の低下を正確に評価することが重要であることが指摘された.
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