研究概要 |
水循環モデルの要素決定などのために基準とすべき時間的・空間的スケールを得るには,地表面の基本的な構成形態および水文諸量の分布特性とその変動性を明らかにする必要がある.平成8年度には代表的地表面水文量として蒸発散と表面流出に注目して以下の2点について検討した. (1)一様と扱われる地表面条件にある領域下で蒸発散量の空間的な分布と変動量はどのようになるか,(2)擬河道網を用いて流域地形をスケールアップする場合,地形特性や流出応答特性がどのように変るか,である.前者の検討ではいわゆる「琵琶湖プロジェクト」として共同観測研究の対象となっている地域の裸地・潅漑水田における微気象値および土壌水分量は地表面,葉面の空間的な分布の観測・調査データが用いられた.後者の場合は擬河道任意地点における任意降雨に対する表面流出ハイドログラフを算定するために新たに開発した“全域表面流出モデル"を用いた. 研究の結果,同一土地利用下での蒸発散量については,晩秋季の裸地(乾水田)および盛夏の潅漑水田とも蒸発散量は領域平均量からの推定と分布推定量の平均値とがほぼ等しくなるが,場所的な変動は大きく,盛夏の潅漑水田においは変動幅は潜熱フラックスにして100W/m^2程度もあることなどが知れた.擬河道網を用いた検討では,500m以下のメッシュの地形データから得られる地形特性量と1000m以上のメッシュデータから得られる地形特性量とは明らかな差異があること,流域要素スケールを拡大しても流域全体の応答時間が見掛け上同程度になることがあるが,その場合でも斜面流の到達時間と河道流の到達時間の寄与率が大きく異なることなどが明らかになった.
|