本研究成果は、以下の3点に集約される。 1)人工気象室を用いた温熱環境実験により、屋外環境における人体の熱収支と気象要因との関係を明らかにした。その結果、暑熱環境下において人体の熱平衡性は保たれていないこと、表面の湿り度が熱負荷量と一価関係にあることなどを導いた。以上の結果から人体熱収支理論に立脚した新しい屋外用の温熱感指標(仮想熱負荷量)を提案し、既存の指標に比べて被験者による温熱感を極めて良好に表現しうる有効な指標であることを立証した。 2)多摩川河川敷の親水公園において気象・人体生理・温熱感アンケートの同期測が行われた。これにより、都市河川及び緑地帯近傍と、市街化区域との温熱環境の違いが、気象学的・人体生理学的視点から定量的に明らかにされている。また、1)で提案された屋外温熱感指標の有効性がこの観測においても確認された。 3)典型的な都市内大規模緑地である明治神宮において、人体への影響が極めて大きいと予想されているが定量的データの少ない気候緩和・大気浄化機能に着目した集中観測が行われた。その結果、神宮の森による熱・汚染物質の吸収量が定量的に把握されると同時に、植物生理計測データーと森林環境気象モデル同化させる新たな手法が提案され、その有効性が示された。
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