本研究では、夏季の暑熱環境を対象として、都市河川・都市緑地周辺における微気象学的観測と人体の温熱環境計測を同時に行い、その実態を把握すると同時に、観測結果から都市緑地・都市河川の有する気候緩和効果に関する定量的指標を導出することを目的として行われた。具体的には以下の成果に集約される。 (1)インフラ周辺の微気象学的特性の定量評価:典型的な都市域(銀座)、都市公園(明治神宮)、都市河川(多摩川・相模川)・都市道路(国道246号線)において大規模な現地観測が実施され、渦相関法などの高精度計測法により、各地点の熱収支をはじめその微気象学的特性を定量的に把握することに成功した。明治神宮での観測では、微気象測定の他、汚染物質吸収量(大気浄化能)・テルペン放出量(森林浴機能)・CO2吸収量(炭酸同化能)も併せて定量化された。 (2)人体温熱環境の把握:特に多摩川・神宮の観測では、微気象学的計測の他、人体の温熱感・快適感アンケート・脳波計測など人体生理学的計測も併用して行われ、人体-環境-体系の視点から、その環境学的効果が定量化された。 (3)新しい気候緩和指標の提案:人工気象室を用いた室内実験により、各種暑熱環境条件(日射・風速・温度・湿度)における人体の発汗作用や温熱感・快適感・生理学的反応を解析し、人体の熱非平衡性の事実に基づいて、新しい温熱感指標(VTL)が提案された。また、この指標が、実際の人間の温熱感を適切に表現していることが確認された。
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