平成7年の7月に、斐伊川において二度の出水があり、これらの洪水のピーク時から水位の下降期に6回にわたって、橋梁上の高さ4mの塔の上から洪水の水面流況を撮影した。 得られた写真の画像解析によって洪水流の水面における流速ベクトルを求め、それを用いて流線、渦度および発散の分布を計算し、洪水の増水期と減水期の各段階の乱流構造の特徴を比較検討し、洪水流の乱流構造の非定常特性を調べた。 流況撮影と並行して、流れとともに流下する十字浮体に取り付けた音響測深機によって測線を横断方向にずらせながら河床計測を行い、洪水の増水期と減水期の各段階において洪水時の河床形状を三次元的に計測した。 河床計測の結果から、波長3〜4mの砂堆と波長約30mの中間規模の砂州が捉えられ、洪水時にはそれらとさらに規模の大きいうろこ状砂州とが多重構造性を持って形成されていることが明らかにされた。また、平成5年と6年の三つの洪水時の計測結果も合わせて検討した結果、砂堆の波高は水位のピークより約3時間遅れて最大になること、砂堆の波長は波高のピークよりさらに2〜4時間遅れて最大になることが明らかにされた。さらに、中間規模の砂州と砂堆の洪水時の移動速度について検討した結果、後者の移動速度は前者のそれよりも4〜5倍大きいことが明らかとなった。 以上のように、洪水時の水面流况と河床形状の変化特性について、貴重な資料が得られた。この結果については、京都大学防災研究所年報(第39号)に発表予定である。
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