洪水流はボイルや並列らせん流を含む三次元構造を有するとともに、流れの非定常性という重要な特徴を持つ。また、洪水流は河床形状を時々刻々変化させ、洪水流の構造は河床形状によって大きな影響を受ける。本研究は、このような洪水流の特徴に着目して、斐伊川において洪水の増水期と減水期の各段階において水面流況と河床形状の同時計測を行い、洪水流の乱流構造の非定常特性を把握しようとしたものである。 本研究においては、洪水流の水面流況がビデオカメラで撮影され、流況画像を解析した結果から、洪水流の水面には多くのボイルと渦運動が存在すること、ならびに洪水流中に並列らせん流が存在することがわかった。また、洪水の増水期から減水期までの各段階で、流速や水深、さらには河床波の波高や波長の時間的変化に応じて、ボイルの強さ、規模や発生頻度が異なり、渦運動の強さ、規模や配置も異なるため、形成される並列らせん流の規模や規則性にも違いができること、ならびに斐伊川の洪水流は下流部においても比較的勾配が大きく、水深が浅く、波高が大きい砂堆が形成されるというような特徴をもつために、比較的不規則性の強い並列らせん流が形成されることがわかった。さらに、観測によって得られた流速、水深と水面勾配を用いて洪水時の河道の抵抗特性を検討した結果、マニングの粗度係数は、概略的には砂堆の波高および発生するボイルの強さに対応して変化していることがわかった。 一方、十字浮体による河床計測結果から、河床形状の階層構造特性、砂堆の波高と波長の時間変化特性、小規模砂州と砂堆の移動速度、砂堆の流下に伴う流砂量などが明らかにされ、濁度の鉛直分布の計測結果から、浮遊砂量の時間変化特性が明らかにされた。
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