研究は強風時における護岸からの飛沫の発生と護岸背後地での飛沫の輸送プロセスに関して行われ、研究成果は以下の様に要約される。 1.消波護岸からの飛沫の発生と輸送プロセス 大分県別府湾に設置された標準的な断面形状をもつ消波護岸を対象に模型実験を行った。得られた結果は次の通りである。 1)消波護岸付近の領域では風による飛沫の移流と沈降が釣り合った移流沈降領域が形成される。鉛直方向に十分高い所や風下方向に十分流下した所では飛沫は微細粒子となり流体粒子の移流と拡散が釣り合って輸送される。 2)消波護岸における沖波・風速・潮位の条件が与えられた場合、護岸付近の飛沫濃度を定量的に与えるフロー・チャートを示した。 2.自然海浜モデル上の飛沫の輸送プロセス 消波護岸や離岸提などによって保護されている人工海岸での飛沫の発生量や陸域への輸送プロセスを理解する上で、自然海浜からの飛沫の発生と輸送プロセスを明らかにする必要がある。このような観点から、沖合海域、浅水域、陸域を対象とした模型実験を行った。得られた成果は以下の通りである。 1)沖合海域が強風域にある場合、飛沫輸送量や大気中の飛沫濃度は風下方向にほぼ一様となり、飛沫の拡散と沈降が釣り合った形で飛沫濃度分布が決定される。 2)浅水域では入射波を繰り返しながら波高を減少させるため沖合海域で見られる飛沫の拡散と沈降の平衡状態は崩れ、飛沫濃度は風下方向に急速に低減する。 3)陸域においては水面からの飛沫の供給は完全になくなり飛沫の粒径も微細となるため移流と拡散の平衡状態が形成される。
|