我が国の交通施設整備や交通サービス改善の計画プロセスにおいては、その決定に際し住民や利用者の参加の機会がほとんどない現状にある。そのため数々の反対運動に遭遇し計画の円滑な進行に悪影響を及ぼす結果となっていると考えられる。このような現状を打開するために、近年情報公開の条例化や地区計画への住民参加の導入が試みられている。しかし、幹線交通施設整備及びサービス改善においては、住民・利用者の意見を取り入れてそれを計画に反映させるための方法論に関する研究はほとんど行われていない。本研究では、計画主体と住民・利用者のインタラクティブな関係を構築するための新たな調査分析手法の提案を目的とする。 住民・利用者が幹線交通計画に対する意識を調査する方法としては、前回の調査結果を提示しながら再度質問を繰り返すデルファイ法を用いる。これにより、調査結果を計画にフィードバックさせたり、調査そのものの受容性や問題点を明らかにすることが可能となる。調査票の構成に関しては、計画の初期段階では計画に直接言及する質問を避け、より間接的な質問から結果を加工していく工夫が要求される。また、数少ない回答から多くの分析結果を得るための分析手法の提案も重要である。本研究では知覚マップやコンジョイントモデルを応用して、順位データや評点データを加工することを試みる。 このような調査分析手法の有効性を検証するために、長野新幹線建設地の周辺住民に対して二度の意識調査を行い、情報提供によって住民意識が多数意見に影響を受けること、意識のぶれが小さくなっていく等の結果を得た。
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